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夜 [Diary]

会社のとてもエライ人を交えてお酒を飲むという機会があったんだけど、この人はとてもエライ人なのにとてもエラソウな雰囲気を出さない、とてもいい人だ。

その二次会の最中、午前1時半すぎに実家の母親から突然メールが来て、「救急車で病院に運ばれた」と書いてあったものだから、驚いて帰ろうとしたんだけど、よくよくみたら3週間くらい前に来たのと同じメールだった(3週間前に、ちょっとしたことで救急車に乗るハメになったのだ)。たぶん何かの拍子に再送しちゃったんだと思う。それに気がついたときにはすでにかなりの距離を歩いた後で、店に戻ろうにも場所がわからない。普段だったらすぐ気がつくんだろうけど、酔っぱらっていたから。しょうがないので、そのまま家に帰ることにする。

この時間帯、限られた場所からしかタクシーを拾えないので、けっこうな距離を歩く。20代前半くらいに見える女の子とすれ違ったあと、ふと何かを感じて振り向くと、その子がじっとこちらを見ている。というより、すごい目つきでこっちを睨んでいる。こっちもよくわからないまま、なぜか睨み返す。そのまま30秒くらい睨みあった後、どちらからともなく目をそらして、そのまま歩き続ける。そういえばその子は片足裸足だったな、と思う。たぶん、普段だったら睨み返したりせずに、何か話しかけたり質問したりするんだろうけど、酔っぱらっていたから。

高速道路の高架下に、警察官に付き添われたアロハみたいなシャツを着た男がうずくまっていて、その周りに今まで見たこともないような血だまりができている。しかも延々と30メートルくらいにわたって、血痕が続いている。人相の悪い男何人かとすれ違う。たぶん、普段だったらわざわざそんな現場を突っ切ったりはしないんだろうけど、酔っぱらっていたから。

タクシーの運転手さんに「横浜」と告げると、すごく嬉しそうな顔をする。運転手さんは話し好きな人のようで、「お仕事ですか?」とか「接待? 大変ですねえ。でも、このご時世にこの辺で接待なんて、景気いいじゃないですか」みたいなことを、いろいろと話しかけてくる。でもほとんど完全に無視する。普段ならそんなことは絶対にしないんだけど、酔っぱらっていた上に疲れていたから。

タクシー代は高速料金込みで12,400円。13,000円を渡して「おつりはいらない」と言って降りる。普段ならそんなことはしないんだけど、酔っぱらっていたから。

なんだか、今夜の自分は普段と少し違う気がする。酔っぱらっていたから。
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