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ときどき計算してしまうこと [Diary]

何年か前、みなとみらい駅の改札口前のコンコースを歩いていて、男が女を足で何度も蹴りつけているところに出くわした。それはごく普通の二十台半ばくらいのカップルだった。

カップルが何か言い合いをしてるなと思ったら、男は突然女を引きずり倒し、足で蹴りつけた。無言で、何回も何回も。

大きな地下駅の改札の目の前で、だからもちろんたくさんの人の目の前で、にも関わらずその場にいた全員が硬直して動けなかった。

それはたぶん、その光景が意味することをうまく認識することができなかったからで、そのまま続いていれば、たぶん数秒後には誰かがその男を止めに入り、あるいは駅員を呼びに走り、ということをしたはずだと思う。

でも結局だれもそうしなかった。

男は倒れたままの女を何回も何回も蹴った後、唐突に改札の方に向かって早足で歩き出した。

次の瞬間、倒れていた女が立ち上がって、男の腕をつかんだ。男を引き留めようとしているのだということに気づくまで、また少し時間がかかった。

男はまた蹴りつけた。今度は何か罵声を浴びせて、そしてまた蹴って、そのまま一人で歩き去った。女は立ち上がって、その後を追っていった。

その光景がずっと頭から離れない理由は、たぶん暴力そのものよりも、あるいは自分が何もしないでそこに立っていたということよりも、立ち去ろうとする男を女が必死に引き留めていた光景に関係している。

「どうしてこんな男を引き留める?」とか
「どうしてこんな男といっしょにいる?」とか。

もちろん、そこにこそ、DVの本質的な問題点があるということはわかってるんだけど。

内閣府が何年か前に行った調査では、女性の約33%にDVの被害を受けた経験がある(ちなみに男性の約17%にも被害を受けた経験がある)。

それを信じるとすると、たとえばぼくが今いる職場の部署には5人の女の人がいるから、単純に考えてこの中の一人以上には、DVの経験がある(あるいは今その中にいる)ことになる。あるいは、今まで生きてきて記憶に残っている女の人たちの何十人かには、その経験があるということになる。

そしてその数字は、逆からみればそれだけの数、DVを行っているということでもある。

ときどきそんな計算をしてしまう。
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