あなたの謎 [Thoughts]
あなたは自分自身について、長年抱えている謎がある。
なぜ簡単にできるはずの(そしてできると感じる)ことができないのか?
なぜ、人にはできないようなことができるのに、誰にでも簡単にできることができないのか?
なぜ人と同じように振る舞うことができないのか?
いまさら理解してどうなるというものでもないけど、できることなら知りたい。知って、それが何なのか、どういうことなのか納得したいと思っている。
◆
昔から、授業の内容や教師の言っている内容が理解できないことがあった。わからないならわからないと言えばいいのだが、問題は「わかった」と思ったことの理解が実は全く違っていたということが度々あることだった。
大人の読むような難しい専門書を読んでいるにも関わらず、試験問題や先生の言葉の文意が理解できないことがしばしばあった。子どもの頃のことに限らず、そのことは大人になってもあなたを悩ませ続けている。
たとえばあなたは運転免許を取るときに学科試験で落ちて、一度免許を取り損ねている。そのときも、質問の意図がよく理解できなかった。
しかし、そのことを周囲に話すと、不思議なことに「どうしてわからないの?」と言われるのだ。
◆
親も教師もどうしたらあなたに「やる気」を出させることができるのかに腐心しているようだった。
あなたは自分が劣等生であることを自覚はしていたけれど、信じることはできなかった。自分が勉強嫌いであるとは、あなたにはどうしても思えなかった。
昔から図書館が大好きだったし、小学生の頃から、興味のある内容の本であれば、大人向けの専門書だって読んでいた。
それでも授業の内容を理解することができなかった。教科書を読んでも参考書を読んでもまったく頭に入らなかった。
教師や親は集中力に問題がある、もっと集中しろという。
しかし、あなたにとって10分以上机の前に座っていることは不可能だった。理由はわからないけど、ただ座っていることができなかった。そこに座って勉強をしたいと願っても、座っていることができなかった。
あなたは自分が集中したときの状態を知っていた。自分にスイッチが入ったとき、どこまで深く入っていくことができるか知っていた。あるいは、自分がどれほどしつこくて粘り強いか、知っていた。
でも、それは外の世界の人にとっては存在しないのと同じだった。
◆
結局、あなたは違う方法を開発する必要があった。人と同じアプローチでできないことには、違うアプローチが必要だった。
あるとき、好きな音楽を聴きながらなら机の前に座っていられることに気づいた。座っていられるだけでなくて、いくらでも参考書を開いていられた。
読んで理解できないことは、書けば理解できるということにも気がついた。音楽を聴きながら、教科書や参考書に書いていることを一字一句鉛筆で書き写すと、面白いように頭に残った。
やたらと時間はかかるけど、あなたにとって興味のないことを頭に刻み込む方法は、それ以外にはなかった。
◆
「集中できるように」彼らがあなたから音楽を取り上げようとしたとき、彼らはあなたの「暴力性」に驚いた。
◆
同じ頃、あなたは集団の中で人と同じように振る舞うことができないという傾向に対応したプレゼンテーション能力を身につけていった。
「自分はそういう人間なんだ」と強く意識し、人と違う面を敢えて強調するようにした。人と同じように振る舞えないのではなく、振る舞わないのだと認識し、そのように行動した。
人と違っていることを楽しみ、敢えて周囲から浮くように行動し、浮くことを楽しむようにした。同時にそのことを強くアピールした。そしてだんだんと(少なくとも表面上は)本当にそのようなタイプの人間に変化していった。
あなた自身も、周囲の人も、それがあなたの個性であると認識するようになった。
そのロールモデルになったのが「三年奇面組」だった。中学生から高校生にかけてのある時期にあなたを救ったのは、間違いなく「三年奇面組」だった。
◆
あなたにとってのその問題の切実さを理解していた人は、あなたの身内も含めてほとんど誰もいない。
大人になるにつれて、あなたはより洗練されたプレゼンテーション能力を身に付け、敢えて奇異な行動を取るようなことはなくなった。
そしてこの問題に関してどれほど苦しみ、傷つき、孤独を味わってきたか、あなた自身にももうわからなくなってしまっているところがある。
でも今でも問題はちゃんとそこにあって、落とし穴みたいにあなたを待ち受けていることをあなたは知っている。
◆
でも、もしそのことに何か理由があるのなら、それを知りたいとあなたは思っている。知って今さらどうなるものではないけど、何か原因があって、それはその結果なのだと納得することができれば何か変わるかもしれない、とあなたは考えている。
◆
たとえ納得することができても、あなたはきっと、そこから一生逃れることはできない。
◆
あなたがあなたであることから逃れることはできない。
◆
それでも。
なぜ簡単にできるはずの(そしてできると感じる)ことができないのか?
なぜ、人にはできないようなことができるのに、誰にでも簡単にできることができないのか?
なぜ人と同じように振る舞うことができないのか?
いまさら理解してどうなるというものでもないけど、できることなら知りたい。知って、それが何なのか、どういうことなのか納得したいと思っている。
◆
昔から、授業の内容や教師の言っている内容が理解できないことがあった。わからないならわからないと言えばいいのだが、問題は「わかった」と思ったことの理解が実は全く違っていたということが度々あることだった。
大人の読むような難しい専門書を読んでいるにも関わらず、試験問題や先生の言葉の文意が理解できないことがしばしばあった。子どもの頃のことに限らず、そのことは大人になってもあなたを悩ませ続けている。
たとえばあなたは運転免許を取るときに学科試験で落ちて、一度免許を取り損ねている。そのときも、質問の意図がよく理解できなかった。
しかし、そのことを周囲に話すと、不思議なことに「どうしてわからないの?」と言われるのだ。
◆
親も教師もどうしたらあなたに「やる気」を出させることができるのかに腐心しているようだった。
あなたは自分が劣等生であることを自覚はしていたけれど、信じることはできなかった。自分が勉強嫌いであるとは、あなたにはどうしても思えなかった。
昔から図書館が大好きだったし、小学生の頃から、興味のある内容の本であれば、大人向けの専門書だって読んでいた。
それでも授業の内容を理解することができなかった。教科書を読んでも参考書を読んでもまったく頭に入らなかった。
教師や親は集中力に問題がある、もっと集中しろという。
しかし、あなたにとって10分以上机の前に座っていることは不可能だった。理由はわからないけど、ただ座っていることができなかった。そこに座って勉強をしたいと願っても、座っていることができなかった。
あなたは自分が集中したときの状態を知っていた。自分にスイッチが入ったとき、どこまで深く入っていくことができるか知っていた。あるいは、自分がどれほどしつこくて粘り強いか、知っていた。
でも、それは外の世界の人にとっては存在しないのと同じだった。
◆
結局、あなたは違う方法を開発する必要があった。人と同じアプローチでできないことには、違うアプローチが必要だった。
あるとき、好きな音楽を聴きながらなら机の前に座っていられることに気づいた。座っていられるだけでなくて、いくらでも参考書を開いていられた。
読んで理解できないことは、書けば理解できるということにも気がついた。音楽を聴きながら、教科書や参考書に書いていることを一字一句鉛筆で書き写すと、面白いように頭に残った。
やたらと時間はかかるけど、あなたにとって興味のないことを頭に刻み込む方法は、それ以外にはなかった。
◆
「集中できるように」彼らがあなたから音楽を取り上げようとしたとき、彼らはあなたの「暴力性」に驚いた。
◆
同じ頃、あなたは集団の中で人と同じように振る舞うことができないという傾向に対応したプレゼンテーション能力を身につけていった。
「自分はそういう人間なんだ」と強く意識し、人と違う面を敢えて強調するようにした。人と同じように振る舞えないのではなく、振る舞わないのだと認識し、そのように行動した。
人と違っていることを楽しみ、敢えて周囲から浮くように行動し、浮くことを楽しむようにした。同時にそのことを強くアピールした。そしてだんだんと(少なくとも表面上は)本当にそのようなタイプの人間に変化していった。
あなた自身も、周囲の人も、それがあなたの個性であると認識するようになった。
そのロールモデルになったのが「三年奇面組」だった。中学生から高校生にかけてのある時期にあなたを救ったのは、間違いなく「三年奇面組」だった。
◆
あなたにとってのその問題の切実さを理解していた人は、あなたの身内も含めてほとんど誰もいない。
大人になるにつれて、あなたはより洗練されたプレゼンテーション能力を身に付け、敢えて奇異な行動を取るようなことはなくなった。
そしてこの問題に関してどれほど苦しみ、傷つき、孤独を味わってきたか、あなた自身にももうわからなくなってしまっているところがある。
でも今でも問題はちゃんとそこにあって、落とし穴みたいにあなたを待ち受けていることをあなたは知っている。
◆
でも、もしそのことに何か理由があるのなら、それを知りたいとあなたは思っている。知って今さらどうなるものではないけど、何か原因があって、それはその結果なのだと納得することができれば何か変わるかもしれない、とあなたは考えている。
◆
たとえ納得することができても、あなたはきっと、そこから一生逃れることはできない。
◆
あなたがあなたであることから逃れることはできない。
◆
それでも。
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