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ニコチンによって完成する能力? [Diary]

電車の中で「なぜ禁煙することができないか」について延々と話し合ってた二人は、「頭を使う作業や集中力が必要な作業には煙草が必要だし、自分たちの能力はニコチンによって完成するから」といってお互いを肯定し合っていたけど。

でもあなたといっしょに仕事をする非喫煙者は喫煙所の中で打ち合わせをする羽目になるし、あなたが思考力と集中力を高めるために非喫煙者の思考力と集中力は劇的に低下して、しかも服についた煙草の匂いでそのあとの1日気分が台無しになるけどね。



自分は他人に対して比較的寛容なタイプの人間だと思ってるけど、どうしても寛容にも穏やかにもなれないものごとが、喫煙。

単に嫌いというだけでなく、実際に気分が悪くなってしまうことが多いから。知り合いがきちんと断ってくれればもちろん「どうぞ」と言うけど、それでも辛いものは辛い。

本当は、個人的には道路を含む全ての公共スペースは禁煙にするべきだと考えている。

もちろん煙草を吸う権利はあるけど、それは他人に迷惑をかける恐れが一切ない場所、つまり完全にプライベートな空間(個人の住宅)か、密閉された喫煙所の中に限られるべきだと思っている。



煙草を吸わない自分にとっては、禁煙がどれくらい辛いことかは想像するしかないけど、大学時代のバイト先の先輩は「性欲に置きかえてみればわかる」と言った。

「煙草をやめろということは、身体に悪いから一生禁欲しろと言われるのと同じだ。そう言われてお前はやめられるか?」

「禁欲しなくても他人に迷惑かけないけど、喫煙はそうじゃない。そんなアホな例えは聞いたことがない」と言い返したら危うく店の中で殴り合いのケンカになりそうになったのは美しい思い出。

ちなみにそれ以来喫煙を性欲に例えた人は見たことはないけど。



とは言っても、一時期の自分のコーヒーの飲み方から考えれば、自分自身がヘビースモーカーになった可能性だって充分にあった(実際父親はかつて超ヘビースモーカーだった)。

そうならなかったのは、70年代のアメリカで行われていた強烈な禁煙教育のために、放射性物質と同じくらい煙草(そしてその煙)を忌避するようにすり込まれてしまったから。

「喫煙により肺ガンになった○○さん」という人が小学校を巡回してきて、自分の肺のレントゲン写真を見せながら「私のようになりたくなかったら決して煙草は吸ってはいけない」と涙ながらに話す。数ヶ月後、先生から「あのときの○○さんは先週亡くなりました」と聞かされる。

その体験があまりにも強烈で、今思うと「あれは本当に本当だったのか」という疑問が全くないわけではないけど、とにかくあそこまでやられて、煙草を吸えるはずがない。



だから日本の中学校で、たまたま歩いていた体育館裏に新しい吸い殻が落ちていたというだけの理由で喫煙の疑いをかけられたとき、非常に反抗的な態度を取ったのはそういうわけです、Y先生。吸うはずないってのに。

あそこまでやることの是非は議論があるかもしれないけど、アメリカの禁煙教育は間違いなく自分がこれまでに受けた「学校教育」の中でもっとも効果的かつ意味があるものだった。

日本の学校は、トイレや体育館裏での喫煙を摘発はするけれど、子どもを根本的なところで煙草に近づけないための効果的な対策を本気でやってるかというと、やってないような気がする(少なくとも70年代〜80年代にはやってなかった。今はどうなんだろう)。

広告の手法に恐怖訴求というのがあるけど(「ニオイに気づいてないのはあなただけ!」みたいな)、本当の恐怖訴求ってもっと別の使い道があるんじゃないかと思う。



少し前のことだけど、デイブ・ワイナーが自らの禁煙9周年について書いていた。

「2002年6月14日は、私の人生の中で大きな意味を持つ日だ。その日私は死んで、新しい人間として生まれ変わった」

1日に数箱のマルボロライトを空けるヘビースモーカーだったワイナーは、その日発作を起こして心臓バイパス手術を受けた。

幸い命を取り留めたワイナーにとって、それが煙草を吸った最後の日になった。

で、今回ワイナーが書いているのは「今年は(も)その記念日を忘れていた」ということ。

「それこそが、自分はもうニコチン中毒ではないことの証明だ。かつて煙草を吸わないことには自制心が必要だったが、今はもうそうではない」

こういうのを読むと、自分のことみたいにうれしくなるな。

そして、かつて独創的なプログラマー・UIデザイナーであり、魅力的な文筆家でもあったワイナーは、煙草を止めた今でも独創的なプログラマー・UIデザイナーであり、魅力的な文筆家でもあり続けているという事実をもって、「自分たちの能力はニコチンによって完成するから」という言葉への反論とします。
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