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言葉が通じなくなるということ [Thoughts]

個人的に、昔から人との関係の中で大切にしている、そして依存もしてる感覚があって、それは「言葉が通じる感覚があるかどうか」ということ。

言葉が通じない人とは、趣味が合おうが同じ釜のメシを食おうが絶対に合わない。どれほど努力してもある一定以上に親しくなることはできない。

逆にいえば、言葉が通じる(と感じる)かどうかによって、その人と親しくなれる可能性があるかどうかがわかる。

こういうものの考え方が正しいのかどうかわからないし、あんまり品のいい表現だとも思わないけど、そしてあくまでも個人的な感覚で、普遍化できるとは思わないけど、この感覚が外れたことは、今まで一度もない。

だからこそ、言葉が通じる(と感じられる)人のことは、たとえ相手がどう思っていようと関係なく、全力で大切にしたいと思う。

ここでいう「言葉が通じる」という感覚がいったい何を示しているのか、自分でもうまく説明できないんだけどね。話題が合うというのとはもちろん違うし、気持ちよく掛け合いが進むわけでもない。

本当は言葉の問題ですらないのかもしれないけど。



職場の後輩が、学生時代の親友と最近突然話がかみ合わなくなったという話をしていて、何か特に変わったことがないのにとすごく不思議がってたけど(そして自分が何かしちゃったのかと不安がってたけど)、たぶんそういうことじゃないような気がする。

異性・同性を問わず、ずっと関係を築いてきた人と、そしてずっと言葉が通じていた人と、あるとき突然「言葉が通じなくなる」ということがある。

最近では、震災の後に何回か立て続けにそういう経験をした

具体的に言葉が通じないとかそういうことではなく、もっと感覚的なもの。「言葉の層」が違ってしまったような感じというのか近いかもしれない。

それ自体は大したことじゃないし、気にもとめない人が多いと思うけど、その裏では目に見える何かよりももっと深いレベルでやはり何かが変わってる可能性が高いような気がする。

ある場合にはそれは悲しいことでもあるかもしれない。



ずっと昔、個人的には親友といってもいい感覚を抱いていた女友達との間で、突然「言葉が通じなく」なったことがあった。

それはとても不思議な感覚で、特に変わったところは見あたらないんだけど、ただ言葉がうまく通じないというもどかしい感覚だけがある。

しばらくしてわかったのは、彼女が職場の上司と長い間続けていた不倫関係を解消したということだった。

上司とはもう会わないことにしたという話をした後で、彼女は「Tak.くんにももう会わないことにするから」と言った。

「だって、Tak.くんは結婚しているから」というのがその理由だった。

その話を聞いたとき、不思議に思い納得もできなかったのは、これまでもずっと自分は結婚していた、ということだった。

そしてその言葉はいかにも彼女に不似合いだった。彼女は「結婚しているから○○だ」とかいう考え方をするタイプでもなければ、「○○に決めたから」というような物言いをするタイプでもなかった。

でも実際彼女は二度と合おうとしなかったし、電話で話をしようともしなかった。

今になればわかるのは、それは彼女の人生のステージがひとつ前に進んだことで(上司との関係を解消したことはきっと彼女にとって悪いことじゃなかった、はず)、自分と彼女との間の相対的な位置関係が変化したのだということ。

そのことを彼女が実際に言葉にする以前から、「言葉が通じない」という形でそのことを感じていたということ。

それは文字通り「別の層」に移行したようなもので、悪いことでも何でもない。

ただその移行は、上司との関係が彼女を激しく傷つけた結果であり、「言葉の通じない」彼女と以前のような友人に戻ることはきっとできないということであり、上司が先に帰ってしまったホテルの部屋から電話をかけてきて、ひと言「置いてかれちゃったよ」と言った、そこまで自分を信頼してくれた異性の親友にはきっともう会えないということであり。

そのことが少しだけ悲しくないかと言えば、それは少しは悲しいよね。



言葉がある日通じなくなるというのは、つまりそういうこと。
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コメント 1

i--t

すごくわかります。
by i--t (2012-09-01 02:07) 

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