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何かが生まれる秘密の暗い場所 [Thoughts]

夜の都心の公園なんかで、誰もいないと思った暗がりでよくよく目をこらすと実はカップルがたくさんいて、あんなことやこんなことをしてる、という光景の健全さが個人的に大好きだ。

人間が生きていくためには、何かが生まれる秘密の暗い場所が必要だ。

表の世界のすぐ隣にありながら、表の世界とは切り離された人目につかなくて暗くて静かで目的のない場所や時間。

ぼくにとってのそういう場所のひとつが、横浜そごうの裏側の海に面した場所だった。

かつてそこは、広い駐車場になっていた。

そごうの営業時間が終わって夜10時を過ぎると、駐車場のわずかな照明と自動販売機以外は明かりもなく、人気のない暗い場所になる。

すぐそばには、たくさんの人が行き来する横浜駅がある。でも自分たちがいるその場所はそこから切り離されている。誰も来ない。そして海の匂いと港の夜景と暗闇。

なんというか、とても官能的な場所。

そこで自動販売機で買ったジュースでも飲みながら彼女と話をしていると、明るい場所や陽の当たる場所では生まれないような言葉が生まれ、起こらないようなことが起こる。

ふと見ると、あちこちに同じようなカップルたちがいる。絶妙な距離感を保ってお互い邪魔にならないようにしてるけど、不思議な連帯感みたいなものも感じる。

彼らは今どうしてるんだろうなとときどき思う。この場所で始まり、今も続いている関係というのだって、きっとあるはずだ。

今その場所は横浜ベイクォーターになっている。

夜も明るくて人がたくさんいて素敵な(はずの)お店がたくさんある。カップルもたくさんいる。

でも、企画書の匂いがぷんぷんするその場所には、何かどきどきする新しいことが生まれるような官能はもうない。カップルが訪れて時間を過ごしお金を使う場所ではあるけど、カップルが生まれる場所ではない。

目的を決め、光を当て、時間を区切り、経済効果を計算するほど、場所からも時間からも官能は失われていく。

長い目で見ると、そのことがどれだけ人から健全な欲望とエネルギーを奪っているか。
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