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WorkFlowyとOmniOutlinerを比較する [アウトライナー]

2016年2月20日追記:
最近のWorkFlowyの盛り上がりのためか、この記事のアクセスが多いようです。この記事は2013年5月時点での内容です。この記事で指摘したWorkFlowyの問題点はその後改善されています。2014年7月からその旨の追記を文末に追加してありましたが、一部で誤解を招いている形跡があるので文頭↓に移しました。またOmniOutlinerの「巻き上げ」機能はOmniOutliner4では「フォーカス」という名前になってします。


2014年7月13日追記:
WorkFlowyでついに複数トピックの一括選択と「単純なコピペ」か可能になりました。これで名実ともに誰にも迷いなく進められるアウトライナーになったと思います(個人的には引き続きOmniOutlinerを使い続ける予定ですが…)。



メインで使うアウトライナーをOPALからOmniOutliner Proに移行してから、ちょうど一年くらいになる。

今の自分にとってはOmniOutlinerがあまりに自然かつ透明で、当分他のアウトライナーを顧みることはないと思っていたのに、先週それが揺らぐ出来事が起こった(笑)。

WorkFlowyがとてもポピュラーなWEBベースのアウトライナーだということは知っていたし、以前使ってみたことだってあった。でも、そのときは特に強い印象は受けなかった。「数あるいろんなアウトライナーのひとつ」くらいの印象。

でも連休中にツイッターで知り合った方に「WorkFlowyがすごくいい」と言われ、その人のあげたポイントにピンとくるものがあったので(あ、この人わかってる!)、もう一度真剣に使ってみた。

で、陳腐な表現を使わせていただくと、ぶっ飛びましたね。正直言ってWEBアプリでここまでできるのかという驚き。そして自分の目はフシアナだったという再確認(笑)。



WorkFlowyのアウトライナーとしての使い心地・感触は、ワイナーのFargoを含め、他のWEBベースのアウトライナーをはるかに超えている。それどころか、これまて使ったことのある多くのデスクトップ版アウトライナーも超えている。

特に秀逸なのが、ズーム機能のUI

ズーム機能とは、OmniOutlinerでは「巻き上げ」、OPALでは「フォーカス」と呼ばれている機能で、現在選択しているトピックを一時的に最上位階層として表示させる機能。

ひとつのドキュメントのアウトラインを作るのではなく、一本のアウトラインに複数のドキュメントを入れ込むような使い方をする場合に欠かせない機能で、個人的には「真のアウトライナー」の条件のひとつと思っている。

※ちなみにOmniOutlinerでの「巻き上げ」という機能名は英語版の「Hoist」から来ている。これは元祖・アウトライナーであるThinkTankMOREで使われていた名称。その意味で最も伝統的ではあるけど、正直言ってわかりにくい。「フォーカス」や「ズーム」の方がはるかにイメージに近い。

WorkFlowyを勧めてくれたCube(@simplesynthesis)さんの言うとおり、このズームするときのUIが、素晴らしい。何が起こっているのか直感的にわかるアニメーション。そして、何階層も深いところでズームしたときに、現在の階層がいわゆる「パンくずリスト」状に表示されること(ズームの道筋みたいなものですね)。おそらく今までの同種の機能の実装の中で最高のものだと思う。

そしてもうひとつは柔軟なタグの使い方。トピックの中に「#」で始まるハッシュタグを書き込んでおき、後からそのタグをクリックすることでタグのついたトビックだけが表示される(そのアニメーションも素敵)。

これは、アウトライン上の離れたところにあるトピックを一箇所に集めたりしたいときに、集めたいトピックにタグをつけておいてから表示を絞り込み、特定のトピックに下にまとめて動かす、なんていう使い方ができる(MOREではそのために「マーク」と「集合」という独立した機能があった)。

GTD的なことをするのであれば、「#waiting」みたいなタグを使って「連絡待ち」の項目にマークをつけておくとか、いくらでも工夫できますね。

これらは小さなことみたいだけど、アウトライナーのUIにもたらされた久しぶりの意味ある進歩だと思う。

そしてもちろん、WEBベースであるということ。

自分のような会社員にとっては、私物のマックと職場のPCで同じアウトラインを開き、編集できるというのは、本当に本当にありがたい(だって、どんなにOPALやOmniOutlinerがいいといったって、シゴトには使えなかったんだから)。

だからWEBベースのアウトライナーはずっと探していたけど、今まで試してみたものの中では本気の使用に耐えるものはひとつもなかった。ワイナーのFargoがそのはじめての例になったんだけど、残念ながらiPhone上では動作しない。なのにWorkFlowyにはiOS版のアプリまであるのだ。

そんなわけで、シゴト用は即座にWorkFlowyに全面移行。数日のうちに、ミーティングとかのメモとか手順を考えたりするだけじゃなく、メールの文面までWorkFlowyの中で書くようになった。感謝。



そしてこの週末に挑戦したのが、プライベート用のアウトライン、つまりこのブログやRenji Talkの記事を書いたり、レオの翻訳に使ってるアウトラインを、WorkFlowyに移行できるかどうか。これができれば、全面的にOmniOutlinerからWorkFlowyに乗り換えてしまうことになる。

機能の豊富さという点では間違いなくOmniOutlinerだけど、もともとぼくはOmniOutlinerをミニマル設定で使っていて、ごく一部の機能しか使っていない。それよりもポイントになるのはアウトライン、そして文章を操作するときにどれだけ使えるか。

で、結論からいうと、全面移行するには至らなかった。以下がその理由。

そもそも数千トピックの巨大なアウトラインを、WorkFlowyにインポートできなかった。ま、それはそうじゃないかなとは予想してたので慌てず騒がず、数本のブログエントリの編集と、レオの訳に使ってみた。

まずアウトライン操作に関して物足りなく思ったのが、OmniOutlinerでいう「グループ」機能がないこと。

「グループ」は、あらかじめ選択しておいた複数のトピックを一気に新規トピックの下に括ってしまう機能。ボトムアップ的なアウトライン操作をするときに、非常にスピーディな上に直感的で、流れを阻害しない。今回、この機能に自分がかなり依存していることに改めて気づいた。

まあ、これは例のハッシュタグの使い方を工夫することで、ある程度代替できるかもしれない。

決定的だったのは、アウトライン操作ではなく「文章」を書くことに使ってみたときの違い。

WorkFlowyは「文章エディタ」としての機能が弱い。というよりも、「文章エディタ」として振る舞ってくれない。この点に関しては、OmniOutlinerが圧倒的に優れている。

具体的にいうと、WorkFlowyはトピック間でカーソルキーを上下移動したとき、カーソルがトピックのアタマに飛んでしまう。これが著しく直感性を損なう(プレーンな状態のEmacsを使ったときの違和感みたいだ)。

たとえばある行の10文字目からカーソルを上に移動したときは、前の行の10文字目に飛んでほしい。OmniOutlinerでは、トピック間のカーソル移動はごく普通のテキストエディタを使っているのと同じ感覚で自然に使える。

それから、WorkFlowyではトピック単位の「移動」はできるけど、「単純なコピペ」ができない

OmniOutlinerでもOPALでも(そして同じWEBベースのFargoでも)、複数のトピックを選択してまとめてコピー→ペーストすることができる。ごく普通のテキストエディタと同じ感覚だ。トピック単体ではもちろん、折りたたんで下位階層が隠れた状態のトピックであっては、下位階層も含めてコピペすることができる。

アウトライン全体を編集するだけでなく、文章の細部に入り込んで編集しようとするとき、この違いはとても大きい。

ぼくはアウトライナーはロジックとレトリックを同時に操作するもの、だと考えている。

WorkFlowyはアウトライン、つまりロジックを操作することにかけては本当に健闘しているけれど、末端のレトリックまでアウトラインの中で操作するには限界がある(できないことはないけど、そのための機能は単なるテキストエディタ以下だ)。

これはWorkFlowyが本質的に「リスト」作成を意図したもので、「文章」作成のためのものではないということを示している。なんといってもキャッチコピーが「Make Lists. Not War」だからね(Make Love, Not Warのもじりですね)。



そんなわけで、今回はWorkFlowyへの全面移行は見送り。

とはいえ繰り返すけど、WorkFlowyはWEBベースのアウトライナーとしては間違いなくナンバーワンだし、多くのデスクトップアウトライナーよりも優れている。今日的で直感的なUIという点では、OmniOutlinerも超えている。

これからアウトライナーを使ってみようという人に迷いなく勧められる。これは画期的なことだ。

驚くべきことに「誰にでも迷いなく勧められる」アウトライナーが存在したことなんて、これまで一度もなかったんだから。
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コメント 7

NO NAME

はげしく同意!
あのギミックはすごい。
by NO NAME (2013-05-14 23:04) 

gofujita

Tak.さん。まちがって、ひとつ先の記事にコメントしてしまいました。ごめんなさい。

===

この記事に刺激され、WorkFlowy を使い始めてから3週間経ちました。現時点の感想です。

アウトライナーを使ってアイディアの断片をどう構造化するか明快に表現されており、アプリが作者の哲学や生き方の提案のひとつであることを改めて感じました。文章や絵などとちがう、表現方法と言えば良いでしょうか。もちろんiPadやiPhoneでの使いやすさ、デバイス間の同期の敷居のなさも魅力ですが (Omni も同期サービスを強化しましたね)、オリジナリティは少ないでしょうか。

Mac や iOS には、ひとつの機能にフォーカスしたアプリがありますよね。たとえば、文章を練るための Byword、ノートをとるための Drafts や nvALT など。それらと共通する哲学を感じました。

OmniOutliner もアウトライナーの可能性を提案していますが、汎用性と強力さを目指していて、メッセージが複雑で分かり難くなっている、あるいは、ある面ではメッセージを放棄しているのかな、と理解しています。

そして、Fargo は、そのどちらともちょっとちがう気がします。やはり、Dave Winer たちの生き方の提案であると思うのですが、アプリという枠を越えた活動の場という印象です。

それにしても、WorkFlowy にグループ機能がないのは、なぜでしょう。ロジックを構造化する上でも、大切な機能だと思うのですが..。これもひとつのメッセージ?
by gofujita (2013-06-01 11:25) 

Tak.

gofujitaさん
前の記事のコメント削除しておきました(^^)

WorkFlowyは良いところと悪い(というか不足している)ところがちょっと極端ですね。トピックを一括して選択することができないので、ある見出しの下に後から一括して括ろうとすると、一行一行やらなきゃいけない、というのが自分にとっての最大のネックです。

ただ、アウトライナーを使っていて最近感じていたのは「意識は常に流れていて、あるポイントで収束してもまた流れていく」、そして「その前提で全てをひとつのアウトラインに入れてしまえば〈ファイル〉という概念がなくなってしまう」ということでした。

WorkFlowyのUIって、まさにそのことを明快にカタチにしています。それはまさに思想でありメッセージですよね。

それにしてもアウトライナーを巡る環境って、この一年の間に劇的に変わりましたね。本館の方のアウトライナー紹介のページを更新しなきゃと思ってるのですが、本業にかまけて(って変な表現ですが)手をつけられずにいます。
by Tak. (2013-06-01 18:48) 

gofujita

そうそう! ぼくが感動したひとつも、"全てをひとつのアウトラインに入れてしまえば〈ファイル〉という概念がなくなってしまう"ことを、見事に表現したデザインでした。涙が出そうだったというと、ちょっと大げさですが、それに近い。

この WorkFlowy の効能(?)でこの情報管理のやり方がもっと広がるとすばらしいと、期待しています (ニヤリ)。

(誤って入れたコメントの削除、ありがとうございました (ペコリ))
by gofujita (2013-06-01 20:37) 

gofujita

WorkFlowy も、ついに複数トピックの一括選択ができるようになりましたね。

今は OmniOutliner が中心、メールなどの短文やタスク管理を WorkFlowy という使い方をしていますが、これでさらに使いやすくなった気がします。

あとは、opml ファイルなどのインポートができると、ぼくにとってはほぼ完成に近いのですが..
by gofujita (2014-07-11 10:31) 

cube

2013年のゴールデンウィークだったですね☺

WorkFlowyもどんどん進化してますね。更に文字の色付け機能を実装してくれたら、ものすごくうれしい。今後の開発に期待いっぱいです。
by cube (2014-07-13 21:17) 

Tak.

gofujitaさん、cubeさん
ようやく、という感じですね。実装がむずかしいのかなと思ってたましたが、とてもうまく処理できてると思います(ブログ本文にも追記しておきました)。
by Tak. (2014-07-13 22:42) 

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