古くて新しいツール、あるいはアウトライナー史の中のWorkFlowy [アウトライナー]
実はWorkFlowyは自らを「アウトライナー」とは名乗っていません。WorkFlowyのサイト上にもブログにも、どこにもアウトライナーという言葉は使われていないのです。
正直言うと、アウトライナーフリークとして、これには若干のもやもやを感じます。WorkFlowyは明らかにデイブ・ワイナーのThinkTankから始まるプロセス型アウトライナーの系譜にあるからです。
でも、その気持ちもよくわかります。
私自身も、「アウトライナー」もしくは「アウトラインプロセッサ」という名前は、このソフトにはあまりふさわしくないと長い間思っていました。アウトライナーは決して「アウトラインをつくるソフト」ではないからです。
関連記事:アウトライナーの新しい呼び名
WorkFlowyのタームでは、WorkFlowyは「Zoomable Document」(伸縮自在な文書、とでも訳せばいいでしょうか)です。WorkFlowyもアウトライン、アウトライナーという用語が固定化してしまう何かを嫌ったのかもしれません。
でも、WorkFlowyは確かにアウトライナーの歴史の中でとても重要な存在です。そして、アウトライナーを現代的な形で再生するとともに、その本質に光を当てることにも成功しています。
■
ひとつの文章であると同時に複数の文章の集合体でもあるというのは、プロセス型アウトライナーが本質的に持っている特性です。プロセス型アウトライナーの定義は「項目を等価に扱い、見出しと本文を区別しないアウトライナー」ですが、それは必然的に「タイトル(≒ファイル名)も区別しない」ことにつながるからです。
しかし、私は長いことこの特性に気づいていませんでした。
プロセス型アウトライナーであっても、従来型のデスクトップアプリである限り、通常のワープロやエディタと同じようにアウトラインをファイルとして保存することになります。
それでは、理論上はアウトライナーの誕生当初から変わらなかったこの特性を、本当には体感できなかったということでしょう(当初から体感していた人はいたはずだと思います)。
私はかなり前からOPALやOmniOutlinerなどを使って複数の文章(の断片)をひとつのアウトラインに入れていましたが、そのきっかけは苦し紛れのようなものでした。書きかけの断片をうまく管理することができず、やむを得ずひとつの巨大なアウトラインに入れるようになったのです。
しかし、ひとつのアウトラインの中で断片が自由に結合し、分離しながら育っていく様子を目にして、これが(プロセス型)アウトライナーの本質なんだと気づきました。同時に「見出し」だけでなく「タイトル」も思考をしばっていたことを実感しました。
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この「ひとつの文章であると同時に複数の文章の集合体」という特性を、仕様レベルで突き詰めたのは、私が知る限りWorkFlowyがはじめてです(なにしろひとつのアカウントにつきひとつのアウトラインしか作れないのです)。
それはWorkFlowyがクラウドサービスであること、つまりもともとローカルにファイルを保存する必要がないことと無関係ではないでしょう。
クラウドと結びつくことで、プロセス型アウトライナーがもともと持っていた特性が浮かび上がってきたと言えるかもしれません。
(これは倉下忠憲さんとWorkFlowyについて話しているときに気づかされたことです)
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「ひとつのアウトライン」を実用的に使うための機能が、任意の項目を一時的に最上位の階層(≒タイトル)として表示する機能、WorkFlowyでいえば「Zoom」と呼ばれる機能です。
この機能自体は決して新しいものではありません。ThinkTankやMOREといった初期のアウトライナーは「Hoist(ホイスト=巻き上げ)」という名前で同様の機能を備えていました。
現在でも、同様の機能を備えたアウトライナーはいくつかあります。OmniOutlinerやOPALでは「フォーカス」、NeOでは「巻き上げ」、Treeでは「項目を別タブで表示」と呼ばれる機能がそれです。
しかし私も含めて、この機能の意味を本当には理解していなかった人が多いのではないかと思います。
その意味では、プロセス型アウトライナーはクラウドが実現して(そしてWorkFlowyが形にして)はじめてその本質をはっきり表した、古くて新しいツールと言えるのかもしれません。
もちろん、シンプルで柔軟なタグ機能や項目のシェアなど、WorkFlowyが新しくアウトライナーにもたらした可能性もたくさんあります。
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プロセス型アウトライナーのもともとの発想。それを現代的に再生したWorkFlowy。ツールをつくる人。手を入れる人。すすめる人。本を書く人。工夫する人。
やはり、今の状況は5年前には想像もつかなかったし、素晴らしいことだと思います。
(※「タイトル未定」こぼれテキストより)
正直言うと、アウトライナーフリークとして、これには若干のもやもやを感じます。WorkFlowyは明らかにデイブ・ワイナーのThinkTankから始まるプロセス型アウトライナーの系譜にあるからです。
でも、その気持ちもよくわかります。
私自身も、「アウトライナー」もしくは「アウトラインプロセッサ」という名前は、このソフトにはあまりふさわしくないと長い間思っていました。アウトライナーは決して「アウトラインをつくるソフト」ではないからです。
関連記事:アウトライナーの新しい呼び名
WorkFlowyのタームでは、WorkFlowyは「Zoomable Document」(伸縮自在な文書、とでも訳せばいいでしょうか)です。WorkFlowyもアウトライン、アウトライナーという用語が固定化してしまう何かを嫌ったのかもしれません。
でも、WorkFlowyは確かにアウトライナーの歴史の中でとても重要な存在です。そして、アウトライナーを現代的な形で再生するとともに、その本質に光を当てることにも成功しています。
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ひとつの文章であると同時に複数の文章の集合体でもあるというのは、プロセス型アウトライナーが本質的に持っている特性です。プロセス型アウトライナーの定義は「項目を等価に扱い、見出しと本文を区別しないアウトライナー」ですが、それは必然的に「タイトル(≒ファイル名)も区別しない」ことにつながるからです。
しかし、私は長いことこの特性に気づいていませんでした。
プロセス型アウトライナーであっても、従来型のデスクトップアプリである限り、通常のワープロやエディタと同じようにアウトラインをファイルとして保存することになります。
それでは、理論上はアウトライナーの誕生当初から変わらなかったこの特性を、本当には体感できなかったということでしょう(当初から体感していた人はいたはずだと思います)。
私はかなり前からOPALやOmniOutlinerなどを使って複数の文章(の断片)をひとつのアウトラインに入れていましたが、そのきっかけは苦し紛れのようなものでした。書きかけの断片をうまく管理することができず、やむを得ずひとつの巨大なアウトラインに入れるようになったのです。
しかし、ひとつのアウトラインの中で断片が自由に結合し、分離しながら育っていく様子を目にして、これが(プロセス型)アウトライナーの本質なんだと気づきました。同時に「見出し」だけでなく「タイトル」も思考をしばっていたことを実感しました。
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この「ひとつの文章であると同時に複数の文章の集合体」という特性を、仕様レベルで突き詰めたのは、私が知る限りWorkFlowyがはじめてです(なにしろひとつのアカウントにつきひとつのアウトラインしか作れないのです)。
それはWorkFlowyがクラウドサービスであること、つまりもともとローカルにファイルを保存する必要がないことと無関係ではないでしょう。
クラウドと結びつくことで、プロセス型アウトライナーがもともと持っていた特性が浮かび上がってきたと言えるかもしれません。
(これは倉下忠憲さんとWorkFlowyについて話しているときに気づかされたことです)
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「ひとつのアウトライン」を実用的に使うための機能が、任意の項目を一時的に最上位の階層(≒タイトル)として表示する機能、WorkFlowyでいえば「Zoom」と呼ばれる機能です。
この機能自体は決して新しいものではありません。ThinkTankやMOREといった初期のアウトライナーは「Hoist(ホイスト=巻き上げ)」という名前で同様の機能を備えていました。
現在でも、同様の機能を備えたアウトライナーはいくつかあります。OmniOutlinerやOPALでは「フォーカス」、NeOでは「巻き上げ」、Treeでは「項目を別タブで表示」と呼ばれる機能がそれです。
しかし私も含めて、この機能の意味を本当には理解していなかった人が多いのではないかと思います。
その意味では、プロセス型アウトライナーはクラウドが実現して(そしてWorkFlowyが形にして)はじめてその本質をはっきり表した、古くて新しいツールと言えるのかもしれません。
もちろん、シンプルで柔軟なタグ機能や項目のシェアなど、WorkFlowyが新しくアウトライナーにもたらした可能性もたくさんあります。
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プロセス型アウトライナーのもともとの発想。それを現代的に再生したWorkFlowy。ツールをつくる人。手を入れる人。すすめる人。本を書く人。工夫する人。
やはり、今の状況は5年前には想像もつかなかったし、素晴らしいことだと思います。
(※「タイトル未定」こぼれテキストより)
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