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パワポ嫌いですか? [アウトライナー]

いや、別にパワーポイントが嫌いなわけじゃない。年賀状は毎年パワポでつくるし(笑)。

でも、パワーポイントは、あくまでもプレゼンテーション用のスライドを作るためのソフトです。今、話している内容のポイントを、ビジュアルに見せるためのソフトです。そのためにはよくできていると思う(Keynoteの方が良くできているとは思うけど)。

そのかわり、ストーリーを持った長大なレポートとか、逆に1枚、2枚の会議用資料をつくるには、本来まったく向いていない。向いてない用途に無理に使おうとするから、結局みんなのやっていることは、紙に紙面のイメージを下書きしてから、パソコンで清書するということです。それって、なんだか時代が20年くらい逆戻りしているような気がする。

改めて思うんですが、ぼくが始めてパソコンに触れた80年代末〜90年代初めは、いわゆる個人の文系的作業(好きな言葉じゃないけど、知的生産ってやつ)に限っていえば、いちばんパソコンが高度に使われていた時代だったのかもしれないと思う。

WEBもクラウドもウィキペディアもYouTubeも無かったけれど、ホワイトカラーの中心的な仕事=広義の文書作成については、実際に今よりもはるかに高度なことが行われていたような気がする。

アウトライナーももちろんそうだし、一太郎なんかも「ビジョン機能」なんていう、テキスト分析のための機能を持っていた。MS-DOSには、UNIXから各種のテキスト処理ツールが移植されていて、その使い方が一般読者を対象とした書籍に紹介されていたりした(たとえば、安田幸弘著 『ワープロ・パソコンで「書く」技術―「快適・スマート・ラクチン・かしこい」ワードプロセッシング入門 』 日本実業出版社 、1991年など)。

当時からは考えられないくらいパソコンは普及したけど、使われ方はむしろ退化している。日本での、アウトライナーに関する最も初期の論客のひとりである奥出直人さんが、以前「季刊・本とコンピューター」に同じようなことを書いていました。
まだMacintoshやWindowsのようなGUI(Grafical User Interface)のパソコンが普及していなかった、十五年ほど前の話だ。当時もいまも、コンピュータを利用した知的生産活動において、もっとも成果が出ているのはテキスト処理の分野である。その頃主流であったキャラクターベースのオペレーティング・システムであるMS-DOSのもとで、「一太郎」や「VZエディター」をつかって文書処理をしたり、パソコン通信にアクセスしてコミュニケーションが可能になったときの感覚こそが、思考の道具としてのコンピュータの真骨頂だったのではないだろうか。
奥出直人「コンピュータは本当に思考の道具か」
(「季刊・本とコンピュータ」1999年冬号)

その後、GUIとデスクトップ・メタファーが、思考の道具としてのパソコンの進化を止めてしまった、と奥出さんは続けます。そして、当時普及し始めていたLinuxが、その流れを変えるきっかけになるのではないかと期待する。

でも、それからまた10年たって、ブロードバンドの普及とか、Googleやブログの登場といった進化もあったけど、ホワイトカラーの仕事の環境という面では、残念ながらそんなに変わっていないと思う。そして、その象徴がパワポのような気がするだけです。
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