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トレプチ最初のメニュー [Diary]

最近出た「樋口可南子のいいものを、すこし。」という本に「トレプチ」の北村葉子さんが紹介されていました。

トレプチは、小金井の小さな小屋で週二回営業しているお菓子屋さんです。その主である北村葉子さんは、かつて吉祥寺の街で、自家製のお菓子を自転車に積んで売っていました。それが口コミで評判になり、今はお菓子界(?)では知ってる人は知っている有名人です。

実はTomo.さんはこのトレプチが自転車で営業を始めたときの、最初の何人かのお客のひとりでした。

それは本当に偶然で、たまたま吉祥寺に用事があり、その帰りに井の頭公園を歩いていたら、女の子が自転車にのせて焼き菓子を売っていて、おいしそうだったのでお土産にキッシュとスコーン(だったと思う)を買って帰ってきたというだけです。ちょっと話してみたら「三日くらい前から自転車でお菓子を売っていて、将来お店をやりたいんです」と言っていたらしい。

そのキッシュの味に驚いたことは、今でもはっきり覚えています。それは美味しいだけでなく、「女の子が手作りのお菓子を自転車で売る」という、メルヘンぽいイメージとは裏腹の、舌にずしっと来るような重みのある味でした。でも次の瞬間「そんな無謀なことが続くはずない」と思ったことも、はっきり覚えています。

季節は秋で、これから寒くなってくるし、世の中にはタチの悪い人間もいるんだから危険だし、体力的にも大変だし、まず無理だろう、と思った(思うよね?)。

でも、その後もなんとなくその女の子のことが気になっていました。どこかで、これはただのメルヘンじゃないという気がしていたのかもしれない。

だからそれから数年だって、「クウネル」に彼女のインタビューが載っていたのをみたときには、本当に驚きました。この何年かの間、ずっと自転車でお菓子を売り続けてきたということ。そして、その固定ファンをじわじわ増やして、メジャーな雑誌で取り上げられるところまで来たこと。なんと言っても「やめなかった」こと。月並みな表現ですが、感動した。

今は自転車での販売はやめて、例の小金井の「小屋」を拠点にしていますが、個人的にとても尊敬する人のひとりです。プロフィールの「尊敬」コーナーにもちゃんと入っている(笑)。

当時、吉祥寺の「クウクウ」でシェフをしていた料理研究家の高山なおみさんが、トレプチのことをこんなふうに書いています(高山さんをはじめとするクウクウのスタッフは、自転車トレプチのヘビーユーザーでした)。
真冬のすごく寒い日に、すっかり着ぶくれてフカフカした耳当てをした葉子ちゃんや、真夏のカンカン照りの日の葉子ちゃんもよく見かけた。そういう時、例外なくいつも葉子ちゃんは笑っていて、周りを取り囲むお客さんも笑顔。ケーキ作りが大好きなんだけど、どうすればいいんだろうととか、お店で働いてるんだけど、自分の好きなケーキが焼けなくて辛いとか、上司がイヤな奴でぜんぜん分かってくれないとか、そういう不平不満を言っている人は、ぜひとも葉子ちゃんの姿を見るといいと思う。彼女はやりたいことを、今の自分が出来る形で、ただ真っ直ぐに実行している。
高山なおみ「日々ごはん〈4〉」アノニマブックス

これはたぶん、何かをしたいと考えている、あらゆる人に対して通用する言葉だと思う。自分も含めて。

ところで、これはTomo.さんが井の頭公園でお菓子を買ったときのメニュー。
trespetit.jpg
日付は2000年10月になっています。ちょうど9年前ですね。たぶんトレプチ最初のメニューだと思う。今となっては貴重品。


昔「ほぼ日」に、自転車時代のトレプチが紹介されたときの記事。
ほぼ日刊イトイ新聞「カワイイもの好きな人々 第16回  焼き菓子はカワイイ。」
タグ:尊敬
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