SSブログ

1の物語 [Thoughts]

第1章
1は5になりたかった。

第2章
1は5のふりをした。
すぐに見透かされた。

第3章
1は5のように振る舞った。
慣れないことはするものじゃないと思った。

第4章
1は5のやり方を真似た。
5のようにはできなかった。
やり方の問題ではないのだと思った。

第5章
1は5が若い頃愛読したという本を手に入れた。
素晴らしい本だった。
目から鱗が落ちた。

第6章
1は嬉しくなって本を3に勧めた。
3はたちまち5になった。

第7章
3は5になるためのセミナーを開催し教材を販売した。
やがて5のことなら3に聞くといいよと人に言われるようになった。

第8章
1はまだ1のままだった。
自分が1であることからは一生逃れられないのだと1は思った。
1は泣いた。

第9章
それでも本は魅力を失わなかった。
装丁は美しかった。
哲学は誠実だった。
ユーモアは知的だった。
ノウハウは実用的だった。

第10章
1の鞄の中にはいつも本が入っていた。
一字一句暗記しているのに、読むたびに新しい発見があった。
発見は1の中で展開し、収束し、結晶した。

第11章
長い時間がたった。
1は本をもう一冊手に入れてベッドサイドにも置いた。
気がつくと3も5もいなくなっていた。

第12章
1はまだ1のままだった。
自分は一生1なのだと1は思った。
コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0