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本を読まない子どもであることを再確認させてくれた記念の文鎮 [Diary]

子どもの頃から、本は好きだけど本を読まない子どもだった。

家には本がたくさんあったし、本に関しては好きなだけと言っても過言ではないくらい買ってもらえた。

でも、本を読まない子どもだった。

少なくとも、自分ではそのように認識していた。



「読書感想文」が苦手だった。だって、本を読まない子どもだったから。

本を読まない子どもだったけど、好きな本はあった。でも、どこがなぜ好きなのか、自分でもわからない。ただ何十回でも読み返しているので、きっと好きなのだろうと推察されるだけ。

その本の文章が身体を通過するときの「ある種のある感じ」を味わいたいから、と今なら説明するだろうけど、やっぱり意味わかんないね。

でも、読書感想文では、感想を述べ、理由を述べなければならない。

読んで感じたこと。読む前後で変わったこと。登場人物について思うこと。いろんなヒントが与えられたけど、何十回も読んだことがあるはずの本であっても、書くべきことはなにひとつ浮かんでこない。



まして、読んだこともない「課題図書」の感想文なんて。

だから、本当ではないことを書いた。

本当でなくてもいいと思うと、俄然楽しくなってきてしまう悪い癖が発動されて、けっこうノリノリで書いた。



その結果として、区だか市だかの小学生読書感想文コンクール(的なもの)にぼくは学校を代表して出場することになった。

各校の代表が自分の感想文を読み上げ、課題図書についての座談会のようなものが行われた。

みんな真面目で優秀で、ちゃんと自分の意見を持っていた。みんな本を読む子どもだ。ぼくとは違う。

その上、ぼく自身がちゃんと自分の意見を原稿用紙に書いてしまっており、それはコピーされてみんなに(ギャラリーの保護者たちまで含めて)配られていた。

今さら逃げることもできない。

ぼくはまた、本当ではないことを話した。そればかりか、どこかの学校の女の子と意見が対立してムキになって熱い議論までたたかわせてしまった。

女の子は少し涙ぐんでいた。

ぼくは大人げない。
大人じゃないけど。



(君のことがちょっとだけ気になってたんだ)



ぼくは嘘つきだ。



コンクールの記念品(だと思う)の文鎮は、机の上にしばらく置いてあった。本を読まない子どもであることを再確認させてくれた記念の文鎮。

考えてみれば、「文鎮」という字面はその目的によくマッチしている。

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